歯の予防とは、虫歯や歯周病などの疾患になる前に、それらを予防することをいいます。痛み等の症状が出てから歯医者に行き治療をする方は多いですが、一度削ったり治療をした歯は、そうでない歯に比べどうしてももろくなってしまいます。また、1本の歯に対して治療できる回数はある程度決まっており、治療を繰り返すことで抜歯しないといけなくなるまでの期間が短くなってしまいます。
そして、1本歯が無くなると、他の歯に、食事などで噛む力の負担がかかってしまうため、治療が必要になりますが、治療する際にはどうしても他の歯を削る必要があるので、その歯の寿命も短くなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
このようにはじめは小さな虫歯ですが、それが原因で将来的には歯が全て無くなってしまう、ということにもなるのです。以上の理由により、事前の歯の予防がとても重要になります。
歯の予防の中心は定期的な歯科検診とセルフケアです。フッ素塗布や口腔内診査、歯垢や歯石の除去(PMTC)、歯磨き指導などを行います。セルフケアだけでは歯垢や歯石を完全に取り除くことができません。きちんと磨いたつもりでも思わぬ磨き残しがあるのです。
小児の予防
小さいお子様のゴールは、永久歯の虫歯がゼロとなることです。なぜ、ゼロを目指すかというと、「歯の予防とは?」の話の中にもあったように、1度虫歯になって治療のサイクルがはじまってしまうと、高確率で歯を失ってしまうからです。まだ虫歯菌が定着していないお子様では、虫歯ゼロを目指すことが非常に重要です。
虫歯菌に感染しやすい時期は生後1歳7ヶ月~2歳7ヶ月の3歳までの間と、6番永久歯が萌出してからの2年間(6歳~8歳くらい)となっています。なのでここまでの期間を頑張っていただければ、虫歯ゼロを達成できる確率が高くなります。
お口のスキンシップを通してお子様に虫歯菌がうつり、虫歯に感染してしまいます。
予防策は感染しやすい時期にお子様と同じ箸やスプーンを共有しない、離乳食の際に咬み与えをしないなどお口のスキンシップを控えることです。そうすることで成長した時の虫歯の本数を少なくすることができます。
またうつさないことと同時に日頃の歯ブラシ習慣も大切になってきます。小さい時は一緒に歯磨きを行うとともに、ちゃんと磨けているか確認と仕上げを、ご両親でしてあげましょう。
そして、3歳までの虫歯になりやすい時期までに歯医者に来てもらい、しっかりと予防していくことが大切です。小さいうちから歯医者さんに通う習慣を身に着けましょう。
妊産婦の予防
妊婦さんを対象にした歯の予防のことで、お母さんに出産前後の歯の健康についての知識を身に着けてもらい出産のリスクを高めないこと、赤ちゃんの虫歯を予防し口の健康を守ることを目的としています。
妊娠中に気をつけたいことの一つとしてお口のケアがあります。近年、妊娠中の歯周病(妊娠性歯肉炎)は、早産および低体重児出産へのリスクが高まることがわかってきました。
これらは妊娠中に増加する女性ホルモンのエストロゲンが大きく関わっているといわれています。エストロゲンが歯肉を形作る細胞を標的にし、また歯周病原細菌の増殖を促ことが知られています。つまりお口の中が歯茎の炎症を起こしやすくい環境になり、歯周病が非常に進行しやすい状況が整ってしまいます。
妊娠中は唾液の量が減ることも後押ししています。妊娠中期から後期にかけて女性ホルモンが増加するため、さらにリスクが高まります。出産とともに元には戻りますが清潔な状態を保つことで炎症を抑えることができますので、プラークコントロールを心がけてください。歯周病は予防可能な疾患ですので赤ちゃんのために確実な歯周病予防を行いましょう。
また、赤ちゃんの口内には虫歯菌や歯周病菌はありません。それなのに虫歯や歯周病になるのは、口移しやスキンシップによってお母さんや家族の細菌が感染するためです。また妊娠すると、つわりによって歯磨きがしにくくなり虫歯になるリスクが高まります。妊産婦の歯の予防ではそうした知識を知ってもらい、必要であれば出産前に虫歯や歯周病の治療をしてもらうとともに、子供に歯磨きをきちんとするなどの正しい生活習慣を身に着けてもらうよう指導します。